ある日、ある生徒さんから、「レッスンには直接関係ないのですが・・・’I'd do that.' には 'if I were you' が隠れていると言うのは本当ですか?」というご質問を頂きました。私は、「いつもではないですが、そういう場合もあります。」とお答えし、「どうしてですか?」という疑問を投げかけました。
仕事で、これをした方がいいかどうかをイギリス人の同僚にEメールで相談したところ、色々な説明の後の答えが ’I'd do that.’ だったのだそうです。その生徒さんは、この「’d」の部分は、次が「do」なので、「would」だと判断し、「would」は丁寧な言い方だと思い、「I'll do that.」を丁寧に言っている、すなわち、その人がそれをやってくれると思い、ご自分では何もしなかったそうです。
数日後、そのEメールをもらった同僚から「どうしてあれをしなかったの?」と聞かれ、「えっ?(あなたが)やってくれるんじゃなかったの?」という事になり、色々話した結果、そのイギリス人の同僚が「’I'd do that’ には、’if I were you' が隠れているんだよ。」と教えてくれたそうです。
実際、would は丁寧な言い方だと思っている生徒さんが非常に多いのですが、’would’ が必ずしも丁寧な言い方という訳ではなく、仮定法で使われた場合に丁寧に聞こえる時があると言うのが正解だと思います。
Wouldは、簡単に言うと主に以下の3つの使い方が一般的です:
1. 未来を表す ’will' という単語を過去に使った事を今表現している(willの過去形)
例:I told you I would do that.
「(過去に)'I'll do that (私がやります)’と(あなたに)言いました」
=「私がやるって言った(よね、じゃん、etc...)」という感じでしょうか?
2. 過去の習慣
例:When we were in the same class, we would often have lunch together.
「(私達が)同じクラスだった頃、(私達は)よく一緒にランチを食べました。」
3. 仮定法(想像している − 'if' という条件がある)
例:Would you know my name if I saw you in heaven?
(曲:'Tears In Heaven' by Eric Clapton)
「もし天国で私があなたに会ったら、あなたは私の名前を知っていますか?」
=「天国で会ったら、(私が)誰か分かる?」という感じ?
この ’Tears In Heaven'という曲は、Eric Claptonが4歳で亡くなった息子さん
の事を思って書いた曲だそうです。
1と2は、使い方や意味が比較的わかりやすいと思います。3の仮定法は、上記の生徒さんの例のように、’If’ の部分を言わなくても分かる場合や、特に重要ではない場合は省略してしまう為、意味が取りにくくなる場合が多いようです。
ですが、わけの分からない ’would’ はほとんど全部仮定法で「もし」が隠されているんだと考えると、分かりやすい場合が沢山あります。
例えば:
That would be great. (「もしそうしてくれるのなら」のような意味が隠れている)
That would be fine. (「あなたがそれで良ければ」などが隠れている)
などと考えれば、どうしてこの様な場合に 'Would' を使っているかわかりやすいのではないでしょうか?
また、I'd go. の場合、「どうしようかな?行こうかな?」と迷っている人に対して言う場合は、「(私があなたなら=私だったら)行く」という意味になるでしょうし、I'd go with you. なら、「(もしあなたが行くのなら、又はあなたがそれでよければ)(私はあなたと)一緒に行く」という状況などで使えます。
では、どういう時に 'would' が丁寧に聞こえるのでしょう?
以下の文章を比べてみてみると・・・
1.I'll go to the beach if it's sunny tomorrow.
2.I'd buy a big house if I won the lottery tomorrow.
1番は、「明日晴れたら」は50/50くらいの割合で晴れるという状態で、「晴れたらビーチに行く」というイメージで、どちらになるか分からない場合に使います。この他、I'll go to work if I feel better tomorrow, but if I don't, I'll go to the doctor's. や、I'll name my baby Jack if it's a boy.(妊娠中の女性のセリフ)などもこのパターンです。
2番は、「(明日宝くじに当たるとは思っていないけど)もし(万が一)当たったとしたら、大きな家を買う。」という感じで、そんな事にはならないだろう(又は、絶対ならない)けど、もしそうなったとしたら・・・という場合に使います。例えば、What would you do if there was a fire?, I wouldn't do that if I were you. などもこの形です。上記の歌詞も天国で会うなんてあり得ないだろうけど・・・と思っているので、この形となります。
この違いから、Will you open the window (if you don't mind)?の「もしよろしければ」は、ダメと言われるかもしれないけど、多分やってくれるかな?の「もしよかったら・・・」、Would you open the window (if you didn't mind)?の「もしよろしければ」は、「万が一よろしければ・・・」という感じになるので、この場合はWillよりWouldの方が丁寧に聞こえる事になります。
この形の would ですが、上記の例に出てきた生徒さんにご質問を頂いた2〜3日後、かかりつけのお医者さんと電話で以下のような会話(英語)をしました:
お医者さん:処方箋を出しておくから、取りに来て下さいね
私: Bootsに送ってもらえます?
お医者さん:OK。今からBootsに送るから午後にでも届くはず
私: じゃ、今日午後に取りに行きます
お医者さん:あぁ、でも在庫がないかもしれないから、I'd go tomorrow.
この I'd go tomorrow. を聞けば、お医者さん「私が明日行きます」を丁寧に言っているのではなく、「(私だったら)明日行く」と言っているのも分かりやすいのではないでしょうか。
上記の例の生徒さんも、このお医者さんとの会話のような状況を先に経験していれば、I'd do that. の意味もわかったかもしれませんね。
ちなみに、同僚の方がやってくれると思って、この生徒さんがしなかった事は、しなくても大きな問題になるような事ではなかったそうです。ホッ、よかった!
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