ハリケーン・ハービーに続き、イルマ、そしてマリアと、今年はカリブ海・アメリカ南部でハリケーンによる大きな被害が出ていて、心が痛みます。同時に、「イルマ」の発音が英語では/ɜːmə/という事で、暗いニュースでも、そこから出来るだけ色々な事を学んで、少しでもポジティブな事を見出そうと思い、英単語のスペリングの 'R' をカタカナではどう表すかをご紹介することにしました。
特に、カタカナのまま読めば英語と違う発音になってしまう4種類の ’r’の代わりに使われるカタカナ についてお話します。
1. ル
Irma イルマ /ɜːmə/ (日本語3音節;英語2音節)
Barcelona バルセロナ /ˌbɑːsəlˈəʊnə/ (日本語5音節;英語4音節)
Persia ペルシャ /ˈpɜːʃə/ (日本語3音節;英語2音節)
Versailles ベルサイユ /veəˈsaɪ/ (日本語5音節;英語2音節)
bergamot ベルガモット /ˈbɜːɡəˌmɒt/ (日本語5音節;英語3音節)
’r’だけの発音は、ラテン語系の言語では'd'っぽかったり、舌をもっと動かして’rrr'のように舌をRollさせて発音したりするようです。この、’rrr'の様な音は日本語で一番近いのが「ル」なのかもしれません。それが理由かどうかは分かりませんが、’r’を「ル」と書く単語で思い出すのは、ラテン系から来ている単語や固有名詞が主でした。
アメリカ英語では、’r’を発音しますが、「ル」と違い母音はありません。「ル」と発音すると母音が入り音節の数が一つ増えるので、’響き’も変わってしまいます。
また、余談ですが、日本人には、’l’だけの発音(Dark l) も「ル」と聞えるのか、milk ミルク/mɪlk/, always オールウェイズ /ˈɔːlwəz/, bill ビル /bɪl/, table テーブル/ˈteɪbl/, metalメタル /ˈmetl/など、カタカナに「ル」があるものが多いようです。
2. ア
door ドア /dɔː/ (日本語2音節;英語1音節)
floor フロア /flɔː/ (日本語3音節;英語1音節)
or オア /ɔː/ (/ə/) (日本語2音節;英語1音節)
more モア /mɔː/ (日本語2音節;英語1音節)
’r’が「ア」と書かれるものは、イギリス英語で以前/ɔə/と発音されたもの(がほとんど)です。イギリス英語で次に母音がない場合’r’を発音しなくなった時代に、’r’の代わりに/ə/で発音する二重母音が登場しました。その後、そのような二重母音は徐々に無くなりつつありますが、その中でも/ɔə/は今では全滅し、辞書には載っていない音です(1977年に発音辞書には、まだ/ɔə/は存在していたそうです。また、一部の地域ではまだ使われています)。
カタカナでは、/ɔə/の/ə/ の部分を「ア」で表していることになりますので、1970年代以前のカタカナを今でもそのまま使っているのかもしれません。または、アメリカ英語では発音されると’r’の部分が「ア」っぽく聞こえるため、「ア」と書くという可能性もあります。
どちらにしても、上の4つの単語、カタカナはみんな「ア」がありますが、英語には「ア」のはありません。そして、1番にも書いたように、「ア」を発音することで英語とは音節の数が変わります。
3. ’ー’ のばす
sister シスター /ˈsɪstə/
year イヤー /jɪə/
here ヒヤー /hɪə/
doctor ドクター /ˈdɒktə/
Oxford オックスフォード /ˈɒksfəd/
afterwards アフターワーズ /ˈɑːftəwədz/
'r'の変わりにその前の母音をのばすものは、’r’の前の母音が短い(特にシュワ)か二重母音の場合に多いようです。アメリカ英語では上記の単語の’r’は発音しますので、その部分が長く聞えるからだと思います。イギリス英語では、上記の単語には/r/の音は無いので、長く発音しません。カタカナでは、母音を伸ばして発音するだけなので、それが原因で音節の数がかわるわけではありませんが、上記の単語はやはり全て日本語と英語で音節の数が違います。
4. 無視
bird バード /bɜːd/
car カー /kɑː/
pork ポーク /pɔːk/
heart ハート /hɑːt/
mark マーク /mɑːk/
'r'の前の音が長母音の場合、カタカナでは’r’は無視される事が多いようです。イギリス英語ではそれで正解ですが、アメリカ英語の場合は上記の単語は全て’r’を発音します。どちらが正しいというわけではありませんので、自分で発音する時にはどちらでも良いですが、統一性があった方がきれいに聞えると思います。
上記の4つ以外にもあるかもしれません、ご存知の方は是非お知らせ下さい。また、’r’の次に母音(母音を表すスペリングではなく、母音の音の事)がある場合は、カタカナは「ラリルレロ」のどれかになるようですね。
’r’の次に母音がある場合の例:
ring リング /rɪŋ/
around アラウンド /əˈraʊnd/
correct コレクト /kəˈrekt/
pro プロ /prəʊ/
Maria マリア /məˈriːə/
ハリケーンの名前のお話からここまで来ましたが、どうやって名前を決めるんだろう?と思ったら、名前のリストがあって、それをローテーションして使うらしいです。歴史に残るくらいの大きなハリケーンの場合、同じ名前を使うと混乱するため、そういう名前はリタイアさせる場合もあるそうです。興味がある方は、以下のリンクにリストや情報があります。
http://www.nhc.noaa.gov/aboutnames.shtml
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