便利さは英語上達の邪魔になる?
- Shigeri Nishide
- Jan 28
- 7 min read

私が20代の頃に英語の勉強(会話・リスニング中心)をしていた時とは違い、今はGoogle翻訳などで英文の日本語訳がすぐにわかったり、インターネットで色々な事を調べたりすることができます。また、DVDやNetflixなどで映画やドラマを観るときに英語の字幕をつけるというオプションもあり、とても便利になりました。
そのおかげで、英語の勉強も効率よくはかどるはず・・・なのですが、その便利さに頼りすぎたり、信じすぎたりすると、上達の邪魔になる可能性も!
そこで、今回は便利さの落とし穴を次の3つに絞ってお話します:
1. 翻訳ツール
2. 英語の字幕
3. ネット検索や辞書の利用
1. 翻訳ツール
テリーザ・メイがイギリスの首相だったころ、翻訳ツールの正確さを試すため、テリーザ・メイの名前が入った文章をあるツールに入力すると、彼女の名前の部分は「テレサしてもよろしい」と訳されて、思わず大笑いしたのを今でも覚えています。
それから約10年、翻訳ツールもかなり改善されたはず。試しに、テリーザ・メイが主語の文章をGoogle翻訳に入力してみると、今回は、彼女の名前は「テレサ・メイ」と翻訳されました。
じゃあ、他の文章はどうなのかな?と思い、Google翻訳とDeepLに ‘I don’t blame you for doing that’という文章を翻訳してもらうことにしました。どうしてこの文章かというと、この英文を言う場面では、日本語ではそういう言い方はしないので、どう訳されるか興味があったからです。
以下が翻訳結果です:
Google翻訳:
「あなたがそうしたとしても責めません」
DeepL:
「あなたがそうしたことは責められない」
DeepLは上記の他に次のオプションもでてきました:
「君がそうしたとしても、責めたりはしない」
「そうしたことについては、君を責めないよ」
この’I don’t blame you (for doing that)’という文章を言う時は、普通、誰かが何かをして、その事に対して、「どうしてそうしたかよく分かる」というような同意を表す表現です(ちなみに、’you’を強調した場合、「あなたじゃなく他の人を責める」というニュアンスになります)。
実際、‘I don’t blame you’を辞書でひくと、Longmanには ‘used to say that you think it was right or reasonable for someone to do what they did’とあり、Cambridgeは’said in order to tell someone that you understand why they are doing something and that you agree with the reason for doing it’とあります。
ということは、Google 翻訳の「あなたがそうしたとしても責めません」は、まだそうしていないけど、もしそうしたら・・・と、仮定して言っているように聞こえるので、本当の意味にはピッタリ当てはまりません。
DeepLのメインの翻訳は、本来の意味に近いですが、日常的に使うにはカタイ!という感じがする日本語で、そんなこといつ言うんだろう?と私は思ってしまいました。
この文章をいう状況をご紹介すると、例えば、何かについて「激怒してしまった」と言った人に対して、’I don’t blame you’と言うことで、「それだったら激怒して当然」という同意や肯定の気持ちを表すことができます。
また、先日カフェで、私の前に並んでいたお客さんがコーヒーを注文した時、「もう朝からこれで2杯目」のようにつぶやいたら、店員さんが ‘I don’t blame you’と言っていました。そう言うことで「朝早くて眠いだろうからその気持わかるよ」という気持ちがこの一言でこのお客さんに伝わります。
このように、日本語に訳すだけでは本当の気持ちが伝わらないことも多く、まさに ’lost in translation’です。そして、日本語訳を見て、わかった「つもり」になってしまうという落とし穴にハマってしまう場合もあります。
興味がわいたので、日本語を英語に訳したらどうなるんだろうと思い、「よろしくお願いします」を翻訳ツールで英訳してもらった結果:
Google翻訳:
Thank you.
DeepL:
It would be my pleasure. または、
Thank you for your kind cooperation.
I look forward to working with you.
という訳がでてきました。
う〜ん、何事も鵜呑みにしない方がいいのかも知れませんね。
2. 英語の字幕
英語のニュース、映画やドラマなどを英語の字幕付きで見ていると、よく使われる単語や表現を覚えるのに役立つかも知れません。そして、リスニング上達にも繋がらなくはないですが、大きな効果は期待できないというのが私の感想です。
それは、字幕の文字を見ているので、音は聞こえていても音を意識して聞いていない場合が多いからです。
実際、いつもBBCニュースを字幕付きで見ている生徒さんに、字幕なしで見てみることをおすすめすると、「英語の字幕をつけているときは、聞こえていたと思っていましたが、字幕なしで見るとぜんぜん聞こえていないことがわかって、ちょっとショックです」とおっしゃっていました。
聞こえていた「つもり」になっていたという落とし穴にハマっていた事になります。
逆もあります。字幕をみていたので、聞こえるはずのものが聞こえていなかったのに、字幕なしだと急に聞こえたというパターンです。
これは日本語の勉強をしている生徒さんのお話ですが、Netflixの「野武士のグルメ」を、一度見たものは字幕なしで見るようにお願いしています。それを試した生徒さんが、あまりにも驚いたのか、こんなメッセージを送ってくれました。
‘Just had to tell you. I’ve just watched the first episode of Samurai Gourmet without subtitles. It’s amazing how much more I heard than I did with the subtitles on. Such great advice. Thank you.’
すでにストーリーを知っているので、ここでこんな事を言うと分かっていて聞いたので、気づきやすかった可能性もありますが、いずれにせよ、字幕をつけているときには全く気づいていなかった(すでに知っている)単語がいくつも聞こえたことをとても喜んでいました。
これは、文字に頼りすぎて、本当は聞こえることに気づかないため、「早くて何も聞こえない」とネガティヴになってしまう落とし穴なのかもしれません。
英語で映画などを見るとき、楽しむために見るのならどんな方法でもいいと思います。でも、勉強のために見るのなら、その都度目的を明確にし、見ている時に何を意識するか、字幕をつけるかどうかなどを決めてから見てみてください。
3.ネット検索や辞書の利用
単語や文章の意味をネットや辞書で調べてすぐに答えがわかるとスッキリします。反面、自分で色々考えていないのでインパクトがなく、記憶に残りにくいというデメリットがあります。
調べること自体は悪くないのですが、まずは自分で考えてみる。例えば、’surreal’という単語に出くわし意味が分からない場合、調べる前に、「’real’があるから、それに関係するような単語なのかな?だとしたら、’sur’ってなんだろう?他に‘sur’がつく単語ってあったけ?」などと色々考えることで、答えがはでなくても、それが’surreal’という単語だと言うことに意識がいくので覚えやすくなります。
逆に、すぐに調べて意味が分かってスッキリしても、意味はもちろん、その単語が’surreal’だったことすら記憶に残らない可能性があります。
これは、’instant gratification’ (即座に得られる一時的な満足感)を求めるという落とし穴だと思います。
すぐに答えを見ず、自分で考えるというステップは、その時は面倒かも知れませんが、その少しの手間をかけることで身につきやすく、長い目でみるとその方が効率がいい場合が多いというのは、私自身の経験からも実感していることです。
この将来の自分のためになるだろうという方法と、今すぐスッキリしたいという気持ちのどちらをとるかは、その時の状況や単語の種類などによって違いますので、私は、その都度、意識して選択するようにしています。
もちろん、翻訳ツール、字幕、ウェブサーチなどは非常に便利なので、補助的な活用はおすすめします。でも、時々便利さに頼りすぎていないか?落とし穴にハマっていないか?を見直してみてはいかがでしょう?そして、便利なツールと自分の頭をバランスよく上手に使いこなし、英語上達に役立ててください。



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